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コラム:世界的なプラスチック規制交渉、合意至らず——産油国の反対で行き詰まり
2024/12/05

世界的なプラスチック規制交渉、合意至らず——産油国の反対で行き詰まり

プラスチック規制の国際的取り組み、依然として課題山積
2024年12月1日、韓国・釜山で開催されたプラスチック規制に関する国際会議が、合意に至らないまま終了しました。世界各国がプラスチック汚染対策のために2年以上交渉を続けてきましたが、今回も大きな進展は見られませんでした。

交渉の行方を左右した深い溝
会議には200カ国以上が参加し、プラスチックの段階的廃止を目指す約100カ国と、生産削減に反対する産油国との間で激しい意見の対立が見られました。特に、条約案第6条に関する議論が焦点となり、法的拘束力を持つ生産削減目標を支持する国々と、リサイクルの強化を主張する産油国グループとの溝は埋まらないままでした。

クウェートの代表は、「プラスチックそのものではなく、プラスチック汚染をなくすべき」と主張。これに対し、メキシコ代表は、「国民と環境を守るため、法的拘束力を持つ条約が必要」と訴えました。

プラスチック汚染の現状とその影響
1950年以降、世界では80億トン以上のプラスチックが生産され、そのうちリサイクルされたのはわずか1割に過ぎません。その結果、毎年何百万トンものプラスチックが海に流れ込み、鳥や魚、クジラといった野生生物に致命的な影響を与えています。さらに、プラスチック生産は温室効果ガス排出量の5%を占めており、気候変動対策の観点からも見過ごせない問題となっています。

産油国の立場と化石燃料産業の影響力
プラスチックの生産削減に最も強く反対したのは、サウジアラビア、イラン、ロシアなどの産油国グループでした。これらの国々は、石油需要が今後減少する中で、プラスチックが新たな成長分野になると期待しており、削減目標の設定に懸念を示しました。

また、石油化学業界の影響力も指摘されています。シンクタンク「インフルエンス・マップ」によると、企業による条約への介入の93%が生産削減に反対するものでした。

再交渉への期待と課題
一方で、ユニリーバやネスレといった大手メーカーは国際的な規制を支持しており、これらの企業の後押しが今後の交渉に影響を与える可能性があります。WWFは、前向きな95カ国が独自の条約を策定するべきだと提案しており、再交渉への期待が高まっています。

プラスチック規制の合意が成立するには、各国が経済的利益と環境保護のバランスをどう取るかが鍵となるでしょう。次回の会議は2025年に予定されています。今後の進展が注目されます。