コラム:世界の気温上昇、1.5度の壁を超える――気候変動の影響が顕著に
世界の気温上昇、1.5度の壁を超える――気候変動の影響が顕著に
2024年に入り、世界の平均気温が工業化以前の水準よりも1.5度以上上昇していることが、欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)によって明らかになりました。これは観測史上初めての事態であり、パリ協定で定められた目標を超える事態となっています。
パリ協定の目標と現状の乖離
2015年に採択されたパリ協定は、気候変動による深刻な影響を回避するために、気温上昇を1.5度以内に抑えることを目標として掲げました。しかし、今回の報告では2023年から2024年にかけての平均気温が1.52度に達したことが指摘されています。この目標超過は長期的なものではないとされていますが、科学者たちは気温上昇のペースがこのまま続けば、持続的な1.5度超過に至るリスクが高まると警鐘を鳴らしています。
自然現象と人為的要因の相乗効果
気温の上昇には、自然現象であるエルニーニョ現象が関与しています。エルニーニョは通常、気温を一時的に約0.2度ほど上昇させるものですが、今回の異常な温暖化は、温室効果ガスの継続的な排出が主な原因となっています。特に、二酸化炭素(CO2)やメタンといった温室効果ガスの排出が、地球の気温を押し上げていることが確認されています。
気候変動による影響――世界各地での異常気象
この1年の間に、気候変動の影響が世界中で明確に表れています。猛暑や干ばつ、洪水、森林火災などが頻発しており、特にチリでは大規模な森林火災が2月に発生しました。これらの異常気象は、気温のわずかな上昇でも引き起こされるリスクが高まっていることを示しています。
科学者たちの警告と希望
国際的な科学者たちは、まだ気候変動を遅らせる手段が残されていると指摘しています。特に、炭素排出量を迅速に削減することが、気温上昇を1.5度以内に抑えるための鍵となると強調しています。また、再生可能エネルギーの普及や電気自動車の導入など、世界各地で進展が見られる点については楽観的な見方も示されています。
特に、温室効果ガスの排出と吸収のバランスをとる「ネット・ゼロ」が達成されれば、地球の温暖化はほぼ停止するとされており、この10年で排出量を大幅に削減することが、未来を守るために極めて重要です。
未来への選択
科学者たちは、「破滅は避けられないものではない」との見解を示しています。最悪のシナリオであった4度以上の温暖化は現時点では可能性が低下しているものの、引き続き注意が必要です。社会としての選択が、最終的に地球の将来を決めると考えられています。
温暖化に対する対策はまだ間に合いますが、そのためには今後の行動が重要です。技術革新や政策転換を進め、持続可能な未来を築くための取り組みが世界中で求められています。