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コラム:カーボン・オフセットとは?概要や取り組みを解説
2022/09/15
私たちの暮らす地球は、現在さまざまな環境問題を抱えています。数ある課題のうちでも「地球温暖化」や「気候変動」に関して解決策などが議論される中、「カーボン・オフセット」という言葉がよく聞かれるようになりました。カーボン・オフセットは、地球温暖化を進行させてしまう温室効果ガスについて、経済活動や日常生活から排出される量を削減しようとする考え方、あるいはそのような活動の一つ。では、その詳しい内容や取り組みはどんなものなのでしょうか?

今回は、カーボン・オフセットの概要、どのような取り組みがあるのかについて解説していきます。


カーボン・オフセットとは?

カーボン・オフセットとは、日常生活や経済活動によって排出されてしまう、二酸化炭素等の温室効果ガスを、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、削減が困難な部分の排出量については全部または一部を、他の場所での温室効果ガス削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により「埋め合わせる」という考え方です。

他の場所での温室効果ガス削減・吸収とは、再生可能エネルギーの利用や省エネルギーの推進による二酸化炭素排出削減、植林・森林保護活動により二酸化炭素の吸収を促す活動などのことを指します。

地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出量を削減するため、省エネなど現在さまざまな努力が行われています。しかし、それだけでは温室効果ガスの排出量を、完全にゼロにすることはできません。そこで、上記の他の場所での温室効果ガス削減・吸収活動によって、大気中の二酸化炭素量を相殺していこうという考えがカーボンオフセットです。


★カーボンニュートラルとの違いは…
カーボンニュートラルは、地球上の温室効果ガスの排出を極力抑えつつ、排出量と吸収量・除去量を均衡させることで、排出量を実質的にゼロ(正味ゼロ、ネットゼロ)にすること。カーボンオフセットから一歩発展した取り組みであり、カーボンニュートラル実現のために必要な方法がカーボンオフセットです。
脱炭素・カーボンニュートラルの概要についてはこちらの記事で解説しています→【カーボンニュートラルとは?概要をわかりやすく解説】



カーボン・オフセットの仕組みとは?

環境省では、カーボン・オフセットを次の3ステップで実施するとしています。

1. 知る:CO2排出量を算定する
2. 減らす:CO2の削減努力を行う
3. オフセット:削減しきれないCO2を温室効果ガス削減・吸収の取り組みに資金提供する(クレジットを購入する)ことで埋め合わせる
(参照:カーボン・オフセットガイドライン Ver.2.0 p.3|環境省)


1. 知る:CO2排出量を算定する

カーボン・オフセットに取り組むには、まず二酸化炭素排出量を確度の高い方法で算定する必要があります。再生可能エネルギー、省エネルギー、植林・森林保護活動などによってオフセットされるCO2量の算定も同様に正確になされなければなりません。


2. 減らす:CO2の削減努力を行う

できる限り温室効果ガスの排出を減らす努力をした上で、排出量を埋め合わせる、という考えがカーボン・オフセットにおいて最も重要です。

<排出削減取組例>
・会社の全体の温室効果ガス排出量の削減目標となる基準の設定


3. オフセット:削減しきれないCO2を温室効果ガス削減・吸収の取り組みに資金提供する(クレジットを購入する)ことで埋め合わせる

算定排出量に合わせてオフセット量を決定し、クレジットを無効化します。クレジットを無効化しなければ、カーボン・オフセットは完了しません。クレジットとは、温室効果ガス削減・吸収活動により実現できた削減・吸収量を、決められた方法に従い、定量化(数値化)し取引可能な形態にしたもの。無効化とは一度カーボン・オフセットに使われたクレジットが再び使用されないようにする手続きのことで、具体的には「無効化/取消口座」にクレジットを移転することで行います。

「減らす」「オフセット」の取り組みを、国が認証することによって制度化したものが「カーボン・オフセット制度」です



カーボンオフセットの取り組みとは?

カーボン・オフセットの主な取り組みとして、下記の5つが挙げられます。


  • オフセット製品・サービス
  • 会議やイベントによるオフセット
  • 自己活動によるオフセット
  • クレジット付の製品やサービスによるオフセット
  • 寄付型のオフセット


では、それぞれどのような取り組みなのでしょうか?

オフセット製品・サービス

製品を製造/販売する者やサービスを提供する者等が、製品やサービスのライフサイクルを通じて排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取組。

商品の製造や販売、あるいはサービスの提供などの際に、工場や店舗の稼働、製造時の化学反応等により二酸化炭素が排出されます。こうした製品を製造・販売に関わるライフサイクルを通じて、排出される温室効果ガス排出量分を、企業の投資活動などによってオフセットします。

<例>
・製造に伴う排出をオフセットした衣服の販売




会議・イベントのオフセット
コンサートやスポーツ大会、国際会議等のイベントの主催者等が、その開催に伴って排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取組。

<例>
・会場内の消費電力に伴う排出をオフセットしたチャリティーライブの開催


自己活動オフセット

個人や組織の事業活動に伴って排出される温室効果ガス排出量を埋め合わせる取組。

植林プロジェクトなどによって温室効果ガスの削減努力に貢献した団体が、排出枠を販売し、その排出枠を個人や団体が購入することで、その個人や団体が排出した分の温室効果ガスを埋め合わせることができます。

<例>
・自社の事業活動に伴う排出をオフセットし、自社の CSR レポートで公開


クレジット付製品・サービス

製品の製造/販売者や、サービス提供者、イベントの主催者等が、製品・サービスやチケットにクレジットを付し、消費者の日常生活における温室効果ガス排出のオフセットを支援する取組。 商品やサービスの消費者、イベントの来場者がクレジット付の商品やサービスを購入することで、消費者の日常生活で排出される温室効果ガスをオフセットします。

クレジットとは、二酸化炭素の排出枠のことで、上記の「自己活動オフセット」はクレジットのやり取りをしていると言えます。

<例>
・購入者の日常生活に伴う排出をオフセットする量のクレジットを添付した家具の販売


寄付型オフセット

製品の製造/販売者や、サービス提供者、イベントの主催者等が、製品・サービス等の消費者に対し、クレジットの活用による地球温暖化防止活動への貢献・資金提供等を目的として参加者を募り、クレジットを購入・無効化する取組です。企業などは消費者から集めた資金をもって、クレジットの購入や温室効果ガスの削減・吸収プロジェクトに参加します。

販売時に売り上げの一部をクレジット購入に用いることを宣言するとともに、一定量の金額が集まり次第クレジットを購入・無効化したり、キャンペーンへのアクセス数に応じてクレジットを購入・無効化するなど、消費者とコミュニケーションを取りながらクレジットを活用する取組形態があります。

<例>
・販売額の一部をクレジット購入に用いるスポーツウェアの販売





企業でのカーボン・オフセットの取り組みは?

現在、国内のさまざまな企業でカーボン・オフセットの取り組みがなされています。

企業がカーボン・オフセットに取り組むことは、事業活動に伴う温室効果ガスに責任を持ち、主体的な排出削減活動の促進や、温室効果ガス排出削減活動・吸収活動への資金還流、実施される地域の活性化への寄与につながります。さらに商品やサービスなどを通じて取り組むことで、消費者が温暖化対策や地域活性化に貢献する機会を提供することにもなります。

また、現在SDGsの採択や、ESG(環境、社会、ガバナンス)を重視した投資(ESG投資)が、世界中で主流になってきていることもあり、企業にとって環境への配慮は重要な課題となっています。こうした中、企業がカーボン・オフセットに取り組むことは、以下のようなメリットがあります。
  • 企業のイメージアップ、環境への貢献をアピール
  • 他社との差別化
  • 消費者にエコをアピール
  • 取引先に環境付加価値を提供

では、企業がカーボン・オフセットに取り組むとなると、実際にできることはどんなものがあるのでしょうか?

具体的な実行手順
認識(知る):事業や移動での温室効果ガス排出量をリサーチする
改善(減らす):事業内で省エネ活動を行う、移動は環境負荷の少ない交通手段など、温室効果ガス排出量をできる限り減らす
オフセット:削減できない排出量を理解し、対象となる活動の排出量と同レベルのクレジットでオフセット


<企業での取り組み例>
  • オフィスの空調設定の見直し
  • 休憩時間のオフィス消灯
  • 従業員に対する公共交通機関の利用推進活動
  • 再生可能エネルギー由来電力の調達
  • 社用車を電気自動車にする
  • 再生可能エネルギーPPA(電力販売契約)を締結するオフィスをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)にする
  • リサイクルの実施やリサイクル用品の使用
  • クレジットの購入




いかがでしたでしょうか?
カーボン・オフセットは、温室効果ガスの削減努力をしたうえで、削減できない二酸化炭素の排出を、他の部分で埋め合わせる考え方です。

カーボン・オフセットは個人でも取り組むことができ、多くの企業・団体も実施しているほか、環境省がカーボン・オフセットのガイドラインを発表するなど、日本でも活発な動きが見られています。