コラム:データセンターの排熱を再利用!AI時代に注目される新たな環境対策とは?
AI(人工知能)の急速な普及により、世界各地でデータセンターの需要が拡大しています。一方で、データセンターの稼働に伴う大量の電力消費や、サーバーから発生する熱への対応が、新たな環境課題となっています。
こうしたなか、東京都は2026年10月6日、データセンターの排熱を有効活用するため、3つの協業プロジェクトを採択したと発表しました。これまで十分に活用されていなかった熱を、陸上養殖や発電、冷却設備などに再利用する取り組みです。
本記事では、データセンターが抱える環境問題と排熱再利用の仕組み、東京都が進める最新の取り組みについて解説します。
AIの普及で増加するデータセンターの電力消費
データセンターとは、インターネットサービスやクラウドシステム、AIなどの情報処理に必要なサーバーや通信設備を集約した施設です。
近年は生成AIの普及によって、高性能な半導体を搭載したサーバーの需要が高まっています。こうした設備は大量の電力を使用するだけでなく、稼働時に多くの熱を発生させるため、冷却にもエネルギーが必要です。
国際エネルギー機関(IEA)が2026年4月に公表した報告によると、世界のデータセンターの電力需要は2025年に前年比17%増加しました。さらに、2030年には2025年の約2倍に拡大すると予測されています。
データセンターの拡大はデジタル社会を支える一方、電力需要の増加に伴う温室効果ガスの排出や、地域の電力インフラへの負担が懸念されています。
データセンターの排熱は再利用できる?
データセンターでは、サーバーから発生する熱を冷却設備によって取り除き、施設内の温度を適切に維持しています。
通常、取り除いた熱の多くは外部に放出されますが、この熱を回収して別の用途に利用することで、エネルギーの有効活用につなげられます。
排熱の主な活用方法には、次のようなものがあります。
■建物の暖房・給湯: 回収した熱を周辺施設の暖房や温水供給に利用する。
■農業・養殖: 温室栽培や水産養殖に必要な温度管理に活用する。
■発電: 温度差を利用する技術や、低温の排熱を電力に変換する新技術を活用する。
■冷却設備: 回収した熱を冷却システムの運用に役立てる。
ただし、データセンターの排熱は比較的低温の場合も多く、利用先が必要とする温度によっては、ヒートポンプなどの設備が必要です。
また、熱を利用する施設までの距離や設備導入費用も重要となるため、排熱の再利用には技術面と経済面の両方から検討が必要です。
東京都がデータセンターの排熱活用に向けた3つのプロジェクトを採択
東京都は2026年10月6日、「スタートアップによる未利用熱活用促進事業」において、データセンター事業者とスタートアップ企業が協力する3件の実証プロジェクトを採択しました。
今回の取り組みでは、排熱を新たな資源として活用する技術の有効性や、実用化に向けた課題を検証します。
IMTエンジニアリング株式会社とNTTドコモビジネス株式会社は、データセンターの排熱を利用した陸上養殖システムの構築に取り組みます。
具体的には、排熱を養殖水槽の加温に利用し、バナメイエビの飼育を実証する計画です。
養殖には適切な水温管理が欠かせません。排熱を有効活用することで、従来の加温設備で使用していたエネルギーの一部を削減できる可能性があります。
今回の実証では、水温の安定維持やエネルギーコストの削減効果を検証し、ほかのデータセンターへの展開も目指しています。
株式会社elleThermoとKDDI株式会社は、低温の排熱を利用して発電する「半導体増感型熱利用発電(STC)」とセンサーを組み合わせたシステムの実証に取り組みます。
発電した電力をセンサーの動作に利用することで、電池交換や配線工事を必要としない監視システムの構築を目指します。
これにより、データセンター内の熱の状態を細かく把握し、空調設備の運転を最適化することで、省エネルギーやCO2排出量の削減につなげる狙いがあります。
クラフトワーク株式会社と東急建設株式会社は、鉄道高架下に設置する小規模なデータセンターを対象に、排熱の再利用を検証します。
サーバーから発生する熱を回収し、冷却システムに再利用する仕組みを実証する計画です。
将来的には、周辺施設への温水や冷水の供給など、地域全体でエネルギーを有効活用するモデルの構築も目指しています。
排熱の再利用が環境対策につながる理由
データセンターの排熱を再利用する利点は、これまで十分に活用されていなかったエネルギーを別の用途に役立てられることです。
例えば、施設の暖房や養殖用の加温設備に排熱を利用できれば、新たに熱を生み出すための燃料や電力を削減できる可能性があります。
また、データセンター周辺の施設と連携することで、地域内でエネルギーを有効活用する仕組みづくりにもつながります。
一方、排熱の回収や輸送にもエネルギーが必要です。そのため、実際のCO2削減効果については、設備の運転に必要な電力や熱の利用効率などを含めて評価することが重要です。
今後の課題とデータセンターの環境対策
東京都によると、今回の協業プロジェクトは2026年10月に開始する予定で、実施期間は協定締結日から2028年3月31日までとされています。
2027年3月下旬に中間報告、2028年3月下旬に最終報告が予定されており、今後の実証成果が注目されます。
ただし、排熱の再利用だけでデータセンターの環境問題が解決するわけではありません。
電力消費量そのものを抑える高効率な冷却技術、再生可能エネルギーの導入、サーバー設備の効率化なども並行して進める必要があります。
AIの利用が拡大するなか、データセンターの環境負荷をどのように抑えるかは、今後ますます重要な課題となるでしょう。
まとめ
AIの普及に伴い、データセンターの電力消費量や排熱への対応が新たな環境課題となっています。
東京都が2026年10月に発表した3件の実証プロジェクトは、これまで外部に放出されていた熱を養殖や発電、冷却設備などに役立てようとする取り組みです。
排熱の再利用が実用化されれば、エネルギー消費量やCO2排出量の削減に加え、地域の施設と連携した新しいエネルギー活用にもつながると期待されています。
今後は、実証によって得られる省エネルギー効果や導入費用などを検証し、技術をどこまで普及させられるかが注目されます。