その他

お知らせNEWS


コラム:環境問題に対する世代間の意識差が明らかに|調査から考える環境対策のこれから
2026/09/11

気候変動、海洋プラスチック、食品ロス、生物多様性の損失など、環境問題は私たちの暮らしや企業活動に関わる重要な課題です。

近年は、学校教育や企業の取り組みを通じて、環境問題について考える機会が増えています。一方で、環境問題に対する危機意識や将来への見方は、世代によって異なることが明らかになりました。

公益財団法人旭硝子財団は、2026年9月8日に「第7回 生活者の環境危機意識調査」の結果を公表しました。この調査では、15歳から69歳までの男女1,302人を対象に、環境問題への意識や行動、SDGsの達成見込みなどを調べています。

特に注目されたのが、「環境問題はこれから人類によって解決できるか」という質問への回答です。高校生世代では「解決できる」と答えた人が51.2%だったのに対し、25歳から69歳の大人世代では26.6%にとどまりました。

本記事では、調査結果を紹介しながら、世代間で回答に差が生じた背景として考えられる要因や、企業・家庭が取り組むべき課題について解説します。

環境問題を解決できると考える割合に世代差

今回の調査では、環境問題が人類によって将来解決できるかどうかが尋ねられました。

高校生世代では、51.2%が環境問題を「解決できる」と回答しました。一方、25歳から69歳の大人世代で「解決できる」と回答した割合は26.6%でした。

世代 環境問題を「解決できる」と回答した割合
高校生世代(15~18歳) 51.2%
大人世代(25~69歳) 26.6%

高校生世代の割合は、大人世代のおよそ1.9倍です。

この結果から、高校生世代では環境問題の解決に前向きな見方をする人が、大人世代より多いことが分かります。

ただし、この調査結果だけで、若い世代の方が環境意識全般において高いと断定することはできません。また、世代による回答の差が、学校教育やSNS、社会経験などのどの要因によって生じたのかも、今回の調査だけでは明らかになっていません。

そのため、数値は「世代によって環境問題の解決に対する見方が異なった」と捉えることが適切です。

若い世代の前向きな回答の背景として考えられること

若い世代が環境問題の解決に前向きな回答をした背景には、環境問題に触れる機会の変化が関係している可能性があります。

現在の学校教育では、気候変動、プラスチックごみ、生物多様性、食品ロス、再生可能エネルギーなどが学習テーマとして扱われています。SDGsについて学ぶ機会もあり、環境問題を日常生活と関係する課題として考える場面が増えています。

また、若い世代はSNSや動画配信サービスを利用する機会が多く、国内外の環境問題に関する情報に触れる場面も増えていると考えられます。

森林火災、海洋プラスチック、異常気象、絶滅危惧種などの情報が、写真や動画とともに広がることで、環境問題を遠い国の出来事ではなく、自分たちの将来に関係する問題として捉えやすくなっています。

ただし、今回の調査は、SNSの利用状況や学校教育の経験と環境意識の因果関係を調べたものではありません。これらは、若い世代の回答に影響した可能性がある要素の一つとして考える必要があります。

環境問題に関する情報に触れる機会が増えたことで、若い世代が課題を身近に感じたり、将来の変化に期待を持ったりしている可能性があります。

大人世代の回答から見える環境問題の難しさ

大人世代で「環境問題を解決できる」と回答した割合が低かったからといって、環境への関心が低いとは限りません。

今回の調査では、回答が世代によって異なった理由までは明らかにされていません。しかし、大人世代は仕事や家庭、地域社会などを通じて、環境対策に伴う費用や制度、現場運用上の課題を実感している可能性があります。

近年、国内では次のような環境課題が顕在化しています。

  • 猛暑日や短時間強雨の増加
  • 大規模な土砂災害や水害
  • 野生動物による農作物被害
  • 海洋プラスチックごみ
  • 食品ロスの発生
  • 廃棄物処理費用の上昇
  • 再生可能エネルギー施設と地域環境の調整
  • 企業に求められる脱炭素・資源循環への対応

これらの課題は、単に環境への関心を高めるだけでは解決できません。企業や自治体が対策を実行するためには、予算、人員、設備、法制度、地域住民との合意形成などが必要です。

たとえば、廃棄物を減らす場合、排出量を抑えるだけでなく、分別方法の見直し、保管場所の確保、回収業者の選定、処理費用の確認なども必要になります。

再生可能エネルギーを導入する場合も、設備を設置すれば終わりではありません。自然環境への影響、景観、地域住民との調整、設備の維持管理、使用後の処理などを考える必要があります。

こうした現実的な課題を知っていることが、「環境問題は重要だが、簡単には解決できない」という見方につながった可能性があります。

SDGsの達成見込みにも課題

今回の調査では、2030年時点で達成度が高いと思うSDGsの目標と、達成度が低いと思う目標についても尋ねています。

達成度が低いと思う目標としては、「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」「ジェンダー平等を実現しよう」などが挙げられました。

なかでも、気候変動対策は複数の世代で達成が難しい目標として認識されています。

気候変動対策には、個人の省エネ行動だけでなく、国の政策、企業の設備投資、再生可能エネルギーへの転換、産業構造の見直しなどが必要です。

また、取り組みを始めても効果が表れるまでに時間がかかるため、短期間で成果を実感しにくいという特徴があります。

環境問題は、発生した被害への対応だけでなく、将来のリスクを抑えるための予防的な取り組みも必要です。そのため、成果を分かりやすく示すことが難しい場合もあります。

こうした点が、気候変動対策について「重要だが、達成は難しい」と考える人が多い理由の一つになっている可能性があります。

国際的な連携を求める若い世代

環境問題の解決に向けた枠組みについて、「国連などが中心となって世界全体で話し合い、合意して進める」と回答した割合は、高校生世代で31.3%、Z世代で22.9%でした。

環境問題は、一つの国や地域だけで解決できるものではありません。

温室効果ガスの排出、海洋プラスチック、森林減少、生物多様性の損失などは、国境を越えて影響が広がります。製品や原材料のサプライチェーンも国際化しているため、企業単独の努力だけでは対応が難しい課題もあります。

若い世代の中には、国際機関や各国政府が協力し、共通のルールや目標のもとで環境問題に取り組むことを期待する人が一定数いると考えられます。

一方で、国際的な合意形成には時間がかかり、国ごとの経済状況や政策、産業構造の違いもあります。国際協力への期待を具体的な成果につなげるには、各国の政策だけでなく、企業や地域の取り組みも必要です。

世代間の意識差を対立につなげないことが重要

環境問題をめぐっては、「若者は意識が高い」「大人は環境問題に無関心」といった単純な見方がされることがあります。

しかし、今回の調査で明らかになったのは、環境問題の解決に対する見方の違いです。世代ごとの環境意識全般や、実際の行動量を比較した調査ではありません。

若い世代は、環境教育や新しい情報環境を通じて、将来の変化に期待している可能性があります。

一方、大人世代は、仕事や生活の中で環境対策に取り組む際の費用や制度、現場の負担などを実感している可能性があります。

それぞれの世代には、異なる強みがあります。

世代 考えられる特徴
若い世代 将来への期待や新しい発想を持ち、国際的な連携を重視する傾向がある
大人世代 環境対策に伴う費用や制度、現場運用の課題を捉えやすい
共通する課題 環境問題を具体的な行動や仕組みにつなげること

重要なのは、どちらの世代が正しいかを競うことではありません。

若い世代の発想や将来への期待と、大人世代が持つ経験や実務的な知識を組み合わせることで、環境問題への現実的な対応策を考えやすくなります。

企業に求められる具体的な環境情報の発信

企業は、環境問題への取り組みを実施するだけでなく、その内容を分かりやすく発信することが求められています。

環境配慮を掲げる場合は、「環境に優しい」「持続可能」といった表現だけでなく、次のような具体的な情報を示すことが重要です。

  • どのような環境負荷を削減したのか
  • どの程度の削減効果があったのか
  • 使用した再生材や資源の種類
  • 廃棄物をどのように処理・再利用したのか
  • 取り組みにどのような課題が残っているのか
  • 今後どのような改善を進めるのか

特に、環境配慮を商品やサービスの価値として発信する場合は、根拠を明確にする必要があります。

実態を伴わない環境配慮のアピールは、グリーンウォッシュと受け取られ、かえって企業への不信感につながる可能性があります。

取り組みの成果だけでなく、現在の課題や今後の改善計画も含めて発信することが、消費者や取引先からの信頼につながります。

また、専門用語を多用せず、具体的な事例や数値を使って説明することも必要です。廃棄物の削減量、再資源化率、エネルギー使用量の変化などを示せば、取り組みの実態が伝わりやすくなります。

企業や家庭でできる環境対策

環境問題を自分ごととして考えるためには、課題を大きく捉えすぎず、身近な行動に置き換えることが大切です。

家庭では、食品ロスを減らす、不要品を適切に分別する、省エネを意識する、長く使える製品を選ぶといった行動が考えられます。

企業では、廃棄物の分別、処理業者の適正な選定、再生資源の利用、省エネルギー設備の導入、従業員への環境教育などに取り組めます。

特に廃棄物については、排出後の処理だけでなく、発生抑制や分別の段階から見直すことが重要です。

廃棄物の種類や排出量、保管状態、回収頻度を把握すれば、処理方法の適正化やコスト削減につながる場合があります。

分別が不十分な場合は、再資源化できるものまで混合廃棄物として処理され、処理費用が高くなる可能性もあります。

環境問題は、一人の努力だけで解決できるものではありません。行政、企業、教育機関、地域、家庭がそれぞれの立場で役割を果たし、継続的に取り組む必要があります。

まとめ

旭硝子財団の調査では、環境問題を「解決できる」と考える割合に、世代間で差が見られました。

高校生世代では51.2%だったのに対し、25歳から69歳の大人世代では26.6%でした。

ただし、今回の調査は世代ごとの回答傾向を示したものであり、その差が学校教育、SNS、社会経験などのどの要因によって生じたのかまでは明らかにしていません。

若い世代の前向きな見方と、大人世代が持つ実務的な経験や課題認識は、どちらも環境問題の解決に必要な視点です。

世代間の意識差を対立として捉えるのではなく、それぞれの知識や経験を生かしながら、環境問題を具体的な行動や仕組みに変えていくことが重要です。

※本調査は1,302人を対象としたアンケート結果であり、回答者全体の傾向を示すものです。世代ごとの回答には、年齢以外にも性別、居住地域、職業、環境問題への関心などが影響している可能性があります。