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コラム:欧州で干ばつと森林火災が深刻化|高温が被害を広げる理由
2026/07/24

欧州で干ばつと森林火災が深刻化|高温が被害を広げる理由

2026年夏、欧州各地で干ばつと森林火災が同時に深刻化しています。フランスやスペイン、イタリアでは大規模な森林火災が相次ぎ、住民や観光客の避難が続きました。一方、ライン川やドナウ川などでは水位が低下し、農業だけでなく物流やエネルギー供給にも影響が広がっています。

今回の状況で注目されているのは、単純な雨不足だけではありません。気温上昇によって土壌や河川から水分が失われる速度が速まり、干ばつと森林火災が互いに影響し合う複合的な環境問題となっています。

欧州の広い地域で干ばつが進行

欧州委員会の欧州干ばつ観測所によると、2026年6月下旬には欧州の多くの地域で干ばつが深刻な状態にあり、特に中西部では状況が悪化しました。

フランス、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、英国などの一部では、土壌水分の不足や植生への影響を示す「警戒」状態が確認されています。イベリア半島では一部に回復が見られたものの、依然として広い地域で干ばつへの注意が必要な状態です。

背景には、春から初夏にかけての少雨と高温があります。2026年6月の欧州の陸上平均気温は観測史上2番目に高く、西欧では6月として過去最高となりました。西欧の平均気温は1991~2020年の平均を3.06度上回り、乾燥した土壌や植生が各地に広がりました。

フランス・スペイン・イタリアで森林火災

乾燥した環境は、森林や草地を燃えやすい状態にします。火災の発生原因には落雷、機械の使用、たき火、放火などさまざまなものがありますが、高温と乾燥が重なると、発生した火が短時間で広がりやすくなります。

スペインでは7月中旬、北東部アラゴン州の火災が1万2,000ヘクタール以上に拡大し、1,000人を超える住民が避難しました。その後、グアダラハラ地方では約3万2,000ヘクタールが焼失したと報告されています。

フランス南西部では、ボルドー近郊の沿岸地域で火災が急速に広がり、7月23日までに1万人を超える住民や観光客が避難しました。焼失面積は2,000ヘクタールを超え、約500人の消防隊員が消火活動にあたりました。

イタリアのシチリア島でも数十件の火災が発生し、住民の避難や緊急対応が行われました。欧州森林火災情報システムによると、2026年にEU域内で焼失した面積は7月22日時点で約25万4,000ヘクタールに達しています。前年の記録的な水準は下回っているものの、過去20年間の平均を上回る規模です。

干ばつの原因は「雨が少ない」だけではない

干ばつは一般的に、雨が長期間降らないことで発生すると考えられています。しかし、近年の欧州では高温による水分の蒸発が、干ばつを悪化させる重要な要因となっています。

国際研究グループのWorld Weather Attributionは、2026年の欧州の干ばつについて、降水量と「潜在蒸発散量」を分けて分析しました。潜在蒸発散量とは、水が十分に存在すると仮定した場合に、大気が土壌や植物からどの程度の水分を奪う可能性があるかを示す指標です。

分析では、西欧における4月から6月の少雨そのものについて、気候変動による明確な長期的変化は確認されませんでした。一方、高温によって水分が失われやすい気象条件は、人為的な気候変動がなかった時代と比べて西欧で約80倍、東欧で約40倍発生しやすくなったと推定されています。

つまり、気候変動が雨不足を直接引き起こしたと単純に説明するのは正確ではありません。雨が少ない時期に高温が重なることで、土壌や河川の水分が以前より速く失われ、通常であれば対応可能だった乾燥が深刻な干ばつへ発展しやすくなっています。

河川の水位低下が物流や農業に影響

干ばつの影響は、森林や農地だけにとどまりません。

ルーマニアではドナウ川の水位が1996年以来の低水準となり、農業用水の利用制限や船舶運航への影響が発生しました。ドイツのライン川でも水位が低下し、貨物船が積載量を減らして運航する必要が生じたことで、輸送費の上昇につながっています。

フランスでは農作物への影響が懸念され、ルーマニアでは農家の取水が制限されました。オランダでは水不足が宣言され、ギリシャでは複数の島が干ばつに関する緊急事態を発表しています。

河川の水は、農業用水や飲料水だけでなく、貨物輸送、水力発電、火力・原子力発電所の冷却にも使われます。そのため、長期的な水不足は食料、物流、電力という社会基盤全体に影響を与えます。

生態系への長期的な影響も懸念

森林火災が発生すると、樹木や野生動物の生息地が失われるだけでなく、土壌に蓄積されていた炭素も大気中へ放出されます。火災後に植生が失われた土地では、強い雨が降った際に土砂流出や洪水が発生しやすくなる問題もあります。

河川では水量が減ることで水温が上がり、酸素濃度が低下します。魚類や水生昆虫などへの負担が増え、水質悪化や生態系の変化につながる可能性があります。

干ばつと森林火災は、発生した年だけの問題ではありません。森林や土壌、生態系が元の状態に戻るまでには長い時間が必要です。

排出削減と適応策の両方が必要

欧州で進行している干ばつと森林火災に対しては、温室効果ガスの排出削減と、すでに発生している気候変動への適応を同時に進める必要があります。

適応策には、水道や農業用水の漏水対策、再生水の活用、乾燥に強い作物への転換、森林内の枯れ草や低木の管理、早期警戒システムの強化などがあります。住宅地と森林の境界では、燃えやすい植物を減らし、防火帯を整備することも重要です。

World Weather Attributionは、欧州各国の干ばつ対策には差があり、統一的な水管理や事前計画の強化が必要だと指摘しています。緊急時の取水制限だけでなく、平常時から限られた水資源をどのように配分するかを検討することが求められます。

まとめ

2026年夏の欧州では、少雨、高温、土壌の乾燥、河川水位の低下、森林火災が連鎖する状況が発生しています。

今回の干ばつでは、雨不足だけでなく、高温によって水分が失われる「蒸発の強まり」が重要な要因となっています。気温上昇が続けば、同程度の雨不足でも、農業や河川、生態系への被害が以前より深刻になる可能性があります。

干ばつと森林火災を一時的な自然災害として捉えるのではなく、水資源、森林管理、農業、エネルギー、都市計画を含めた長期的な気候リスクとして対応することが重要です。