その他

お知らせNEWS


コラム:WMOが警告する気温上昇リスクとは?今後5年間の気候予測と企業に求められる猛暑対策
2026/05/29

2026年5月、世界気象機関(WMO)は今後5年間の世界気候予測を公表しました。その内容は、地球規模で高温傾向が続く可能性が高いことを示すものであり、世界中で大きな注目を集めています。

近年、日本でも猛暑日や熱中症警戒アラートが発表される機会が増えました。夏の暑さはもはや一時的な異常現象ではなく、企業活動や人々の暮らしに大きな影響を与える社会課題となっています。特に建設業や物流業、廃棄物処理業など屋外での作業が多い業種では、従業員の安全確保や事業継続の観点から暑熱対策の重要性が高まっています。

今回のWMOの発表は、単なる気象予報ではありません。気候変動が企業経営や労働環境にどのような影響を及ぼすのかを考える上で、重要な示唆を与える内容となっています。

WMOが示した今後5年間の見通し

WMOと英国気象庁(Met Office)が共同で発表した報告書によると、2026年から2030年にかけて、世界の平均気温は引き続き記録的な高水準で推移する可能性が高いとされています。

報告書では、今後5年間のうち少なくとも1年が観測史上最高の世界平均気温を更新する可能性が高いことが示されました。また、2026年から2030年までの平均気温が産業革命前と比較して1.5℃を超える可能性は75%と予測されています。

さらに、北極圏では世界平均を上回る速度で温暖化が進むと見込まれており、極端な高温や豪雨、干ばつなどの異常気象リスクも高まる可能性が指摘されています。

ただし、ここで注意したいのは、WMOが予測しているのは世界全体の平均気温であるという点です。日本国内で必ず猛暑になると断定しているわけではありません。しかし、世界平均気温の上昇は各地域の異常気象発生リスクを高める要因となるため、日本企業にとっても決して無関係な話ではありません。

「1.5℃」という数字が持つ意味

今回の発表で特に注目されたのが「1.5℃」という数値です。

2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃以内に抑える努力を続けることが国際目標として掲げられています。

近年はこの1.5℃という基準が、気候変動対策の重要な目安として広く認識されるようになりました。

もっとも、今回のWMOの予測は今後5年間の平均値に関するものであり、パリ協定で議論される長期的な気温上昇とは異なります。一時的に1.5℃を超える可能性が示されたからといって、直ちにパリ協定の目標達成が不可能になったことを意味するわけではありません。

それでも、世界の気温上昇が続いていることは間違いなく、温暖化対策の重要性が改めて浮き彫りになったといえるでしょう。

気候変動は企業経営にも大きな影響を与える

気候変動というと環境問題のイメージが強いかもしれません。しかし実際には、企業経営にもさまざまな影響を及ぼしています。

例えば、猛暑による労働生産性の低下は多くの業界で課題となっています。気温が高くなるほど従業員の身体的負担は増加し、集中力や作業効率の低下につながります。熱中症による休業や労働災害が発生すれば、企業にとっても大きな損失となります。

また、空調設備の使用増加による電力コストの上昇も無視できません。さらに、豪雨や台風などの異常気象によって物流網が混乱したり、事業所が被害を受けたりするリスクも高まっています。

気候変動はもはや環境部門だけが考えるべき問題ではなく、経営課題の一つとして捉える必要がある時代になっています。

建設業で高まる暑熱対策の重要性

建設業は気候変動の影響を受けやすい業種の代表例です。

屋外での作業が中心となるため、猛暑日は作業員の体調管理が非常に重要になります。高温環境下では疲労が蓄積しやすくなり、注意力の低下による事故リスクも高まります。

近年では空調服の導入や休憩時間の確保、作業時間の見直しなどが進められていますが、今後さらに厳しい暑さが予想される中で、より計画的な対策が求められるでしょう。

物流業が直面する新たな課題

物流業でも猛暑への対応は重要なテーマとなっています。

配送ドライバーは長時間にわたり屋外で荷物の積み下ろし作業を行うことが多く、夏場は特に熱中症リスクが高まります。トラック車内の温度上昇も身体への負担を増加させる要因です。

物流は社会インフラの一つであり、猛暑による人員不足や作業効率の低下は社会全体にも影響を及ぼします。そのため、労働環境の改善や効率的な配送体制の構築が重要になっています。

廃棄物処理業も暑さ対策が不可欠

廃棄物処理業もまた、暑熱対策が欠かせない業界です。

収集運搬や分別作業は屋外で行われることが多く、夏季には高温環境での作業が続きます。加えて、気温上昇によって臭気の発生や衛生管理上の課題が生じやすくなるため、従業員の健康管理だけでなく作業環境全体の改善が求められます。

今後さらに暑い夏が増えることを考えると、熱中症対策はもちろん、作業効率と安全性を両立させる仕組みづくりが重要になるでしょう。

熱中症対策は企業の義務として強化されている

近年は猛暑による労働災害が増加していることから、日本では2025年6月に労働安全衛生規則が改正され、事業者による熱中症対策の強化が求められるようになりました。

これにより、熱中症の恐れがある作業環境では、異常を早期に発見する体制の整備や、緊急時の対応手順の明確化などが重要になっています。

従来は企業ごとの自主的な取り組みに委ねられる部分も多くありましたが、今後は安全衛生管理の一環として、より体系的な対応が求められるようになるでしょう。

WBGTによるリスク管理が重要に

暑熱対策を進める上で欠かせない指標の一つがWBGT(暑さ指数)です。

WBGTは気温だけでなく湿度や日射、輻射熱なども考慮して算出されるため、実際の熱中症リスクを把握する際に有効とされています。

同じ30℃でも湿度が高ければ熱中症リスクは大きく変わります。そのため、近年は建設現場や工場、物流拠点などでWBGTを活用した作業管理が広がっています。

熱中症対策を効果的に進めるためには、気温だけで判断するのではなく、こうした客観的な指標を活用することが重要です。

猛暑を前提とした経営が求められる時代へ

これからの企業経営では、「猛暑になるかもしれない」という考え方ではなく、「猛暑になることを前提に備える」という発想が必要になります。

従業員が安全に働ける環境を整備することはもちろん、事業継続計画の見直しや設備投資、エネルギー対策なども含めた総合的な対応が求められます。

気候変動の影響は今後も長期的に続くと考えられており、暑熱対策への取り組みは企業の競争力や人材確保にも直結する重要なテーマとなっています。

まとめ

WMOが公表した最新の気候予測では、2026年から2030年にかけて世界平均気温が過去最高水準で推移する可能性が高いことが示されました。

これは日本の猛暑を直接予測するものではありませんが、異常気象リスクの高まりを示す重要な警告といえます。

特に建設業や物流業、廃棄物処理業など屋外作業が多い業界では、暑熱対策や熱中症対策の強化が今後ますます重要になるでしょう。

気候変動はもはや遠い未来の問題ではありません。企業経営や働く人々の安全に直結する課題として捉え、今から備えを進めていくことが求められています。