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コラム:冬なのに花が咲く?英国で観測された大量開花と気候変動の関係
2026/01/09

冬に花が咲く?英国で観測された「冬季開花」の実態と意味

本来であれば寒さが厳しく、多くの植物が休眠期に入る1月の英国で、例年以上に多くの植物が開花していることが報告されました。この現象は単なる珍しい出来事ではなく、長年続けられてきた植物観測調査と気象データの分析から確認されたものであり、気候変動が自然環境に与えている影響を示す具体例として注目されています。

本記事では、英国で何が起きたのか、なぜ冬に花が咲いたのか、その背景と生態系への影響について、報道と公式データに基づいて解説します。

英国で何が起きたのか|冬に開花する植物が異例の規模に

英国およびアイルランドでは、植物学団体「Botanical Society of Britain and Ireland(BSBI)」が中心となり、毎年年始に「New Year’s Plant Hunt」と呼ばれる市民参加型の植物調査が実施されています。この調査では、1月初旬に屋外で花を咲かせている植物を記録し、長期的な季節変化を追跡しています。

2025年末から2026年初頭にかけて行われた調査では、通常であれば十数種程度にとどまる冬の開花植物が、今回は大幅に増加しました。報道によると、在来種だけで310種以上、外来種を含めると600種を超える植物が開花していたとされています。デイジーやタンポポ、ナズナなど、本来は春に咲く植物が多く含まれていました。

この結果は、英国主要紙や科学メディアでも大きく報じられ、冬季の植物相としては異例の規模であると伝えられています。

なぜ冬に花が咲いたのか|気温データとの関係

英国気象庁(Met Office)は、New Year’s Plant Hunt の過去データと気象データを照合し、気温と開花数の関係を分析しています。その結果、秋から初冬にかけての平均気温が高い年ほど、1月に開花している植物の種数が多くなる傾向が確認されています。

公式発表では、11月から12月の平均気温が1度上昇するごとに、冬に観測される開花植物の種数がおよそ2.5種増加するという相関関係が示されています。2025年は英国において記録的に暖かい年のひとつであり、今回の冬季開花の増加と気温上昇の関連性が指摘されています。

植物は気温や日照時間をもとに成長や休眠のタイミングを判断します。気温が高めに推移すると、植物が春の訪れと誤認し、通常より早く花を咲かせてしまうケースが増えると考えられています。

フェノロジーの変化|季節と生き物の関係がずれている

植物や動物が季節の変化に応じて示す行動や成長のタイミングは、「フェノロジー(季節生物学)」と呼ばれます。開花時期、紅葉、昆虫の出現、鳥の渡りなどが代表例です。

地球規模で気温上昇が進む中、世界各地でフェノロジーの変化が報告されています。春の花が早く咲く、秋の紅葉が遅れる、昆虫の活動開始が早まるといった現象は、気候変動の影響を示す重要な指標とされています。

今回の英国の冬季開花も、このフェノロジーの変化が目に見える形で現れた事例のひとつと考えられています。

生態系への影響|開花時期の変化がもたらすもの

一見すると美しく穏やかな光景に見える冬の花ですが、開花時期の変化は生態系にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。

まず懸念されているのが、花と受粉昆虫の活動時期のずれです。多くのハチやチョウは春以降に本格的に活動しますが、冬に花が咲いても、それを利用する昆虫が十分にいなければ、受粉が成立しにくくなります。このような「フェノロジカル・ミスマッチ」は、植物の繁殖や昆虫の食物確保に影響する恐れがあります。

また、植物の開花や結実の時期が変わると、それを利用する鳥類や小動物の行動にも影響が及び、食物連鎖全体のバランスが変化する可能性があります。さらに、果樹や農作物では、休眠期間が不十分になることで、霜害や収量低下のリスクが高まることも指摘されています。

冬季開花の増加は単独では決定的な問題ではありませんが、長期的に継続した場合、生態系の構造や生物多様性に影響を与える要因となり得ると考えられています。

世界的な文脈|英国だけの現象ではない

植物の開花時期が早まる現象は、英国に限らず、ヨーロッパ大陸、北米、アジアの温帯地域など、世界各地で報告されています。長期観測データをもとにした研究では、過去数十年で多くの植物が平均して数日から数週間早く咲くようになっていることが示されています。

英国で確認された冬季開花は、こうした世界的傾向の中でも特に顕著な例として注目されており、気候変動が自然界に及ぼす影響を市民レベルでも実感できる事例となっています。

まとめ|冬季開花が示していること

英国とアイルランドで実施された植物調査により、通常では考えにくい規模で冬季開花が確認されました。在来種だけで300種を超える植物が1月に花を咲かせていたことは、過去の調査と比べても際立った結果です。

気象データとの分析からは、気温上昇と開花種数の増加に相関が見られ、植物の季節リズムが変化している可能性が示されています。こうした変化は、生態系の相互関係や農業分野にも影響を及ぼす可能性があり、今後も継続的な観測と検証が不可欠です。

冬に咲く花は、単なる珍現象ではなく、環境の変化が私たちの身近な自然に現れ始めていることを示す一つのサインといえるでしょう。