コラム:【最新分析】1.5℃超過が現実に―世界の気温上昇と国連の警告とは?
【最新報告】過去3年が観測史上最も暑い年に ― 気温上昇は「不可逆的な損害」をもたらす恐れと国連が警告
1.5℃目標は「事実上不可能」でも、世紀末に戻すシナリオはまだ可能
世界気象機関(WMO)と国連は、2023年・2024年・2025年の3年間が、観測史上176年で最も暑い3年間になる見込みだと発表しました。地球温暖化がかつてない速度で進行しており、「不可逆的な損害(irreversible damage)」が現実味を帯びていると強い警告を発しています。
この記事では、国連報告のポイント・最新の科学的知見・1.5℃目標の現状・今後必要な対策について、わかりやすくまとめます。
■ 観測史上最も暑い3年:気候危機は“新たな局面”へ
WMOによると、2025年は観測史上2番目または3番目に暑い年となる見通し。この結果、
◆2023・2024・2025の3年間が史上最も暑い3年
◆過去11年間連続で「史上最も暑い11年間」を更新
という異常な状態が続いています。
WMO事務局長のセレステ・サウロ氏は次のように述べています。
「これほどの高温が続き、温室効果ガス濃度も過去最高を更新している。この状況では、1.5℃目標を維持することは“事実上不可能”になる。」
■ パリ協定「1.5℃目標」はすでに達成困難
国連事務総長アントニオ・グテーレス氏やUNEP(国連環境計画)も、同様に1.5℃達成はほぼ不可能であると明言。
ただし、科学的には「世紀末までに1.5℃へ戻す」ことはまだ可能とされています。
そのためには、
◆森林再生などによるCO₂吸収
◆二酸化炭素除去(CDR)技術による大規模な大気中CO₂回収
など、排出削減+大気中CO₂の回収が不可欠です。
■ 気温1.5℃超過がもたらす“不可逆的な損害”
グテーレス氏は強い言葉で警告しています。
「1.5℃を上回る年が続けば、経済は打撃を受け、不平等は拡大し、不可逆的な損害が発生する。」
科学者たちは次のリスクを懸念しています:
◆グリーンランド・南極の氷床融解
◆海面上昇と沿岸部浸水
◆海洋熱波・珊瑚の大量死
◆熱帯雨林の崩壊など複数のティッピングポイント(臨界点)
これらは一度進行すると元に戻すことが難しく、世界的な被害につながる恐れがあります。
■ CO₂濃度は2024年に過去最高へ:自然の吸収力も低下
WMOは、2024年のCO₂濃度上昇幅が記録上最大だったと報告。
さらに、地球温暖化の進行により、
◆森林(土地)によるCO₂吸収
◆海洋によるCO₂吸収
が弱まりつつある可能性が示唆されています。
これは悪循環を招き、気温上昇をさらに加速させる重大なリスクです。
■ エルニーニョの影響は弱まりつつも、温暖化の勢いは止まらず
2023〜2024年の異常高温にはエルニーニョ現象が影響していましたが、
2025年はラニーニャ/中立状態へ移行しており、一時的に気温上昇は緩和されています。
しかし、人為的な温暖化の影響が圧倒的に大きく、全体の上昇傾向は変わらない状態です。
■ 氷河融解は過去最大、450億トンが消失
2024年までの水文年では、
◆史上最大の氷河融解量(450億トン)
が観測され、海面上昇を加速させています。
■ 異常気象が急増:早期警報システムの整備が急務
異常気象の強度・頻度が増す中、命を守るための「多災害早期警報システム」が急速に整備されています。
WMOによると:
◆2015年:56カ国
◆2024年:119カ国(倍以上に増加)
しかし、世界の約40%の国には未整備で、2027年までの「全世界整備」は急務とされています。
■ まとめ:1.5℃目標は厳しいが、“戻す”シナリオは残されている
国連は明確に警告しています:
◆1.5℃到達はほぼ不可避
◆ただし、技術・政策次第で世紀末に1.5℃へ戻すことは可能
◆今後の温暖化をどこまで抑えられるかが、経済・社会・生態系の未来を左右する
再生可能エネルギーの拡大、CO₂削減、森林保全、CO₂除去技術の加速など、即時かつ大規模な行動が求められています。