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コラム:地球温暖化1.5℃の壁、突破は避けられず 国連が“進路変更”を要請
2025/10/31
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、パリ協定で掲げた「地球温暖化を1.5℃以内に抑える目標」について、「今後数年での超過は避けられない」と明言した。ブラジル・ベレンで開催されるCOP30を前に行われた独占インタビューで、同氏は「このままではアマゾンや極域、海洋で破壊的な転換点を迎える」と警鐘を鳴らした。


1.5℃超過は不可避、だが「進路変更は可能」

グテーレス氏は「私たちは1.5℃を超過することを回避できなかった。しかし、その期間を短く、影響を最小限に抑えることはできる」と述べ、直ちに排出削減を加速させる必要性を訴えた。過去10年間は観測史上最も暑い時期であり、化石燃料の燃焼が続く限り温度上昇は止まらないと指摘している。

各国の排出削減目標(NDC)不足が深刻

国連の集計によると、197か国中62か国しか最新の排出削減計画(NDC)を提出しておらず、全体で見れば温室効果ガス排出量は10%程度しか減らせない見込みだという。目標達成には60%削減が必要とされ、現状では大幅に不足している。グテーレス氏は「このままでは1.5℃超過は避けられない」と述べた上で、今後の交渉で各国が方向転換することを求めた。

化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を

同氏は「化石燃料の時代は終わりつつある」と明言。再生可能エネルギーのコスト低下と拡大が不可逆的な流れであると述べ、「経済的にも再エネへの移行が最も合理的な選択だ」と語った。また、企業ロビーが気候対策を妨げている現状を批判し、「利益追求の代償を払うのは人類全体だ」と警告した。

先住民族の参画を拡大

今回のインタビューは、国連事務総長として初めて先住民族の記者と行われたものでもある。グテーレス氏は「自然の最良の守り手は先住民族だ」と述べ、彼らの知恵と経験を政策決定に生かすべきだと訴えた。ブラジル政府が提唱する「Tropical Forests Forever」構想では、森林保全資金のうち20%を先住民族コミュニティへ直接分配する計画も進んでいる。

COP30に向けた課題

COP30では、各国の排出削減目標の上積み、再エネ転換の加速、そして先住民族を含む市民社会の参加拡大が主要テーマとなる見込みだ。グテーレス氏は「政治指導者は日々の経済問題に追われ、自然との調和を軽視している。今こそ自然と人間の関係を再教育する時だ」と強調した。

「諦めない」姿勢

事務総長として最後の任期を迎えるグテーレス氏は、「気候行動、生物多様性、自然保護への取り組みを決して諦めない」と語った。気候危機への対応は単なる環境問題ではなく、「人類の存続と公正をかけた戦い」であると締めくくった。