その他

お知らせNEWS


コラム:【2025年最新】世界の再生可能エネルギーが初めて石炭を上回る
2025/10/10

世界が歴史的な転換点を迎える

2025年、世界の発電構成において、風力と太陽光による再生可能エネルギーが、史上初めて石炭火力の発電量を上回ったことが明らかになりました。
気候変動対策シンクタンク「Ember(エンバー)」の最新報告書によると、2025年前半の6か月間で、再エネ発電量が世界の電力需要増加を上回り、石炭・ガスの利用量がわずかに減少しました。

特に太陽光発電は前年同期比で約3割増加。世界の電力需要増のうち83%をこの太陽光が賄ったといいます。風力発電も7%超の成長を見せ、化石燃料を初めて押しのける結果となりました。

Emberのシニア電力アナリストであるマルゴジャタ・ヴィアトロス=モティカ氏は、「太陽光と風力が、いまや世界の電力需要の伸びを満たすスピードで成長している。これは“クリーン電力が需要増を追い越し始めた”ことを意味する重要な転換点だ」と述べています。

成長を牽引したのは中国とインド

今回の報告書によると、再エネ拡大を最も牽引したのは中国とインドでした。
中国では、世界全体の新規再エネ発電設備量を単独で上回る規模の投資が進み、2025年前半の化石燃料使用量は前年同期比で2%減少。
インドも再エネ発電量が電力需要の3倍以上のスピードで増加し、石炭利用が3.1%減、ガス利用が34%減と大きく削減されました。

一方、米国と欧州では対照的な動きが見られました。
米国では電力需要が再エネ成長を上回ったため、石炭発電量が17%増加。
EUでは天候不順による風力・水力の出力低下が響き、太陽光の急拡大をもってしてもガス発電が14%増、石炭が1.1%増とわずかに増加しました。

太陽光が「次の主役」へ

国際エネルギー機関(IEA)の別の報告書でも、2030年までに再生可能エネルギー容量が2倍以上に拡大する見通しが示されています。
IEAのファティ・ビロル事務局長は次のように述べています。

「今後の世界の再生可能エネルギー成長を主導するのは太陽光(Solar PV)だ。しかし風力、水力、バイオエネルギー、地熱も同時に重要な役割を果たす。」

特に中国が引き続き最大の市場であり、インドが第2の成長拠点として浮上。さらにサウジアラビア、パキスタン、東南アジア諸国でも太陽光導入が急拡大すると予測されています。

世界の電力構造が変わる

再エネの急伸は、単なる「発電方法の変化」ではなく、エネルギー地政学の再編を意味します。
石炭火力中心だった途上国でも、コスト低下や国際金融機関の支援により、太陽光・風力への転換が現実的な選択肢となっています。

中国の太陽光発電コストは過去10年で80%以上下落。インドでは再エネ電力の入札価格が石炭を下回る水準にまで低下しました。これにより、新規の石炭火力建設は経済的にも非合理とみなされつつあります。

それでも残る課題

とはいえ、再エネが「勝った」と言うには時期尚早です。
各国で次のような課題が指摘されています。

  • ◆電力系統の整備不足:再エネ電力の変動に対応できる送電網や蓄電設備が未整備の地域も多い。

  • エネルギー貧困と地域格差:再エネ投資は都市部・富裕層に偏り、地方や途上国ではアクセス格差が広がる懸念。

  • 政策の不確実性:補助金制度や炭素税の導入・撤廃が繰り返されることで投資リスクが高まっている。

特に欧州では、風況・降水量などの「気象リスク」が発電効率を左右する場面が増えており、気候変動そのものが再エネの安定供給を脅かす矛盾も浮上しています。

日本への示唆

日本でも太陽光・風力の導入量は増加していますが、依然として化石燃料依存が約7割(経産省2024年時点)。
今回の国際報告は、日本が再エネ比率を本格的に引き上げるための明確な方向性を示すものといえます。

  • 再エネ導入と同時に、系統強化・蓄電・需給調整の「電力インフラ改革」が不可欠。

  • 企業のRE100(再エネ100%利用)推進やカーボンクレジット市場の整備も、脱炭素経済への鍵となります。

  • 中小企業や自治体レベルでも、PPAモデル(電力購入契約)や共同発電事業の導入が進めば、再エネ拡大の裾野が広がるでしょう。

まとめ:脱炭素の流れは不可逆

世界の電力システムは、いま大きな岐路に立っています。
再エネが石炭を上回ったことは「終点」ではなく、持続可能な経済へのスタートラインに過ぎません。
気候変動の進行を抑制しつつ、エネルギーの公平な移行(Just Transition)を実現できるかどうかが、次の10年を左右します。