コラム:オーストラリア、環境法を年内に抜本改正へ
2025年8月、オーストラリア政府は「経済改革ラウンドテーブル」での合意を受け、年末までに環境法の大幅な改正案を議会に提出する方針を明らかにしました。従来18か月を見込んでいた手続きを大幅に前倒しし、環境基準の強化や承認プロセスの迅速化、透明性向上を実現する狙いです。
環境法改正に加えて、電気自動車への道路利用課金制度、税制改革の方向性、AI規制の新ガイドラインなど、多方面での政策転換が同時に議論されました。

環境法改正のポイント
■対象となるのは「環境保護・生物多様性保全法(EPBC法)」
■国家環境保護機関の創設が盛り込まれる見通し
■生物種の持続不可能な減少を防ぐため、より強固な環境基準を導入
■プロジェクト承認の迅速化や規制の簡素化で、産業界の負担を軽減
この改革は、2020年に公表されたグレーム・サミュエル氏によるEPBC法レビューで指摘された「歴代政権の制度的不備」に応えるものです。
EV課金制度の導入へ
電気自動車の普及によりガソリン税収が減少しているため、EV向けの道路利用課金制度が検討されています。
■2023年以来棚上げされていたが、9月に州財務相会合で選択肢を協議
■移行方式を段階的導入とするか、一気に導入するかで意見が分かれています。
財務相ジム・チャルマーズ氏は「時代が求める制度だ」と強調しました。
AI規制と著作権改革
生成AIの急速な普及を受け、公共サービスでのAI利用ガイドラインや著作権法改正が検討対象に。
■ジャーナリスト・クリエイターの作品盗用リスクに対応
■「雇用を破壊しない、盗用を助長しない」規制の必要性で労使双方が合意
■公共部門でのAI導入ルール策定を推進
税制改革の方向性
今回の会合では大型の外部レビューは行わず、財務省が中心となってオプションを提示する方針に。
焦点は以下の通りです。
■世代間公平性の確保
■企業投資を促す税制優遇
■複雑化した制度の簡素化
ただし、アルバニージ首相は「今期での抜本的改革は難しい」としており、中長期的課題となりそうです。
ビジネス界・労働界の反応
■豪州ビジネス評議会は「建設的な合意形成が進んだ」と評価。
■豪州商工会議所は「生産性と成長を牽引する改革を期待」とコメント。
■労働組合(ACTU)も「AI規制などで共通認識が得られた」と前向きな姿勢を示しました。
まとめ
今回の改革は、環境保護と経済成長の両立を目指すオーストラリアの新たな政策転換を象徴しています。
■環境法改正 → 生物多様性保護と迅速な承認の両立
■EV課金制度 → 脱炭素社会に対応した財源確保
■AI規制 → 公正な技術利用と著作権保護
■税制改革 → 世代間公平性と成長促進
これらは今後、国内外の投資家や環境政策に大きな影響を与えると見込まれています。