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コラム:気候変動の深刻な影響:氷床の融解がもたらす海面上昇と人類への影響
2025/05/23

はじめに

地球温暖化による氷床の融解が、かつてないスピードで進んでいます。2025年に発表された最新の研究では、グリーンランドや南極の巨大な氷床が急激に溶け出しており、たとえ産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えたとしても、今後100年以内に海面が最大で1メートル上昇する可能性があると警告されています。この現象は、単なる自然環境の変化にとどまらず、私たちの暮らしや社会基盤そのものに重大な影響を与える恐れがあります。

氷床とは何か?──グリーンランドと南極の現状

氷床とは、陸地に広がる厚さ数千メートルにも及ぶ氷の塊のことを指し、現在では主にグリーンランドと南極に集中しています。地球上の淡水の大部分はこの氷床に蓄えられており、これが一気に溶け出せば、世界中の海面が大きく上昇する要因となります。

特にグリーンランドは、温暖化の影響を顕著に受けている地域の一つであり、2000年代以降、夏季の融解量が大幅に増加しています。また南極大陸でも、西南極の氷床が不安定化しており、海への流出が加速していることが観測されています。

予測される海面上昇とその影響

今回の研究によれば、気温上昇を国際的な目標である1.5℃に抑えたとしても、2100年までに約1メートルの海面上昇が起きる可能性があるとされています。このレベルの海面上昇が現実となれば、次のような影響が予想されます。

1. 沿岸都市の浸水と居住不能地域の拡大

東京、ニューヨーク、上海、ロンドンといった海抜の低い大都市は、高潮や暴風雨による被害が増加し、地域によっては恒常的な浸水や退去が必要になる可能性があります。

2. 大規模な気候難民の発生

バングラデシュ、モルディブ、ツバルなど、海抜が非常に低い国や地域では、多くの住民が生活基盤を失い、他国への移住を余儀なくされます。これにより、国際的な難民受け入れ政策や経済的支援の見直しが求められるでしょう。

3. 食料供給やインフラへの影響

沿岸部の農地の塩害、漁場の変化、水資源の汚染など、生活インフラや食料供給にも深刻な影響を与える可能性があります。

氷床融解のメカニズムと加速要因

氷床の融解は、単に気温が上昇することで表面が溶けるだけでなく、複雑なプロセスが関与しています。


アルベド効果の低下

氷が溶けると地表の反射率(アルベド)が低下し、太陽熱を吸収しやすくなります。これがさらなる融解を引き起こす「フィードバックループ」が形成され、加速度的に氷床の減少が進みます。

氷河の流出と氷棚の崩壊

氷床の一部は「氷河」として海に向かって流れており、その先端にある氷棚(海に浮かぶ氷)が崩壊すると、内陸からの氷の流出が加速します。これは、グリーンランドや南極の氷床崩壊を加速させる主要な要因の一つです。

対策は可能か?今後の展望と国際的な取り組み

氷床融解を完全に止めることは難しいものの、被害の拡大を抑えるための行動は可能です。


国際的な気候協定の強化

パリ協定では、気温上昇を2℃未満に、できれば1.5℃以内に抑えることが掲げられています。しかし、現在の各国の排出削減目標では、1.5℃目標の達成は困難とされており、より実効性のある措置が求められます。

再生可能エネルギーの導入拡大

温室効果ガスの主要な発生源である化石燃料から脱却し、再生可能エネルギーへの転換を急速に進めることが必要です。

沿岸部の適応政策

すでに海面上昇の影響が顕在化している地域では、防潮堤の整備や計画的な移住支援など、適応政策を実行に移す段階に来ています。

私たちにできること

地球規模の問題に対して個人でできることは限られているかもしれませんが、それでも以下のような行動が大きな意味を持ちます。

◆エネルギー消費の見直し(節電・省エネ)
サステナブルな商品選び
環境保護に関する情報発信
選挙を通じた環境政策重視の声の反映

まとめ

氷床の融解は、地球温暖化の「最後の警告」ともいえる重大なサインです。これを放置すれば、100年後の地球は今とはまったく異なる姿になってしまうでしょう。国際社会の協調とともに、私たち一人ひとりが地球の未来に責任を持つ行動を選び取ることが、今まさに問われています。